08/6/13




 水道水源より標高が高い水海山に管理型最終処分場を建設することは無謀であり、水文地質(地下水)基礎調査を行っていないのは環境アセスメントの定石を逸脱している−−。9日の町議会で一般質問を行った菊池睦男氏=写真=が、日本環境学会前副会長・坂巻幸雄氏(元通産省工業技術院地質調査所・環境地質学)のこのコメントを紹介した。菊池氏は「処分場建設に反対するわけではない」としながら、将来の水の安全のために、地下水調査の必要性を訴えた。
              
 菊池氏は一般質問で、「20世紀は石油、21世紀は水をめぐる争いになると、学者は警告している。世界では、何億という人間が水に飢えている。八丈町も後世に水の不安を残してはならない。町民に安心を与えるための学術調査は必要だ。私が相談した日本環境学会の地質の専門家からは、調査をしないままの着工は無謀、との衝撃的なコメントをいただいている。コメントは重大な内容なので、全員協議会で審議の時間を保証してほしい」と述べた。
 これに対し、山越整住民課長は「安全な飲料水の確保は町の最優先事項であり、安全な施設を建設するよう一組に要望していく」と答えた。
 沖山宗春議長は菊池氏の申し出を受け入れ、全協で坂巻氏のコメントのコピーを配布、議員に協議を求めた。
 議員からは「終わり。工事は決まっていることだ」(長戸路義郎氏)、「今まで手順を踏んでやってきた。遮水シートがダメなら、日本全国(の処分場)がダメということになる」(山口英治氏)との発言が続いた。浅沼町長は「逃げないで議論してほしい。水は問題だ。調査がデタラメならば、一組に徹底的にやってもらわなければならない」と発言したが、他の議員から審議を求める声はなく、全協は閉会した。
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 各分野の専門家約600人が科学的視点で環境問題に取り組んでいる日本環境学会の前副会長・坂巻幸雄氏は、菊池睦男氏の問い合わせに対し、「現地調査を経た後でなければ責任あるコメントはできない」としながら、「あくまでも環境地質学上の一般論」として、水源より標高が高い位置に処分場を建設することの危険性に言及した。環境アセスメントの定石である水文地質(地下水)基礎調査を行っていないままの施工は危険極まりない、という指摘だ。
              
 「八丈富士も三原山も、玄武岩質の溶岩と火山灰が重なり合った、いわゆる成層火山。溶岩にはガスが抜けて発泡している部分と溶岩流の中心をなしている緻密な部分があるが、後者の場合でも冷却による割れ目(節理)が発達しているので水をよく通す」という。このことは、事業主体の一組も4月の説明会で「地下は玄武岩質で水がよく通るので、施工上は都合がいい」と説明している。
 坂巻氏が心配するのは「水がよく通るということは、万一の場合に汚染の拡大が抑止できない地質構造であること」だ。遮水シートの寿命の50年説は過大値で、業界では完璧に施工・管理された場合でも15年程度と言われているという。
 さらに、「水源より上位に処分場を建設すること、谷間や窪地を埋めることは絶対にやってはならない」と指摘。次の対案を提言している。
 「処分場の立地はどうしても標高の低い平地に限られる。埋立量が5万立方メートル弱であるから、100メートル四方の土地を高さ5メートル程度の堰堤で囲めば容量的には充足できる。底部は防水コンクリートと遮水シートで防護し、浸出水処理装置と地下水の監視施設は完備する。進入道路は、必要ならば土地を買収してでも建設する。もちろん、これらは行政が一方的に推進して良いものではなく、住民との綿密な協議のもとに合意形成を図ってゆかなければならない」。
 坂巻氏は「大切なのは、住民のゴミに対する関心の喚起」とし、容量をあえて3万立方メートルに縮小して「常時、全島的に危機感を共有する方がいいかもしれない」と、発生総量の抑制策でゴミの減量を図るよう提案した。
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 南海タイムス社では、この問題について、直接坂巻氏に電話でインタビューした。坂巻氏は処分場の建設を進める上で注意すべきこととして「地下には思わぬ水の通り道があるので、あとで取り返しのつかないことにならないよう、安全か危険かを評価できない段階では『危険』とする予防原則を基本に考える方がいい。調査で安全性が確認されて初めて、その見方はゆるめられる。水海山は処分場からの汚水漏れが起こった場合には、地下水の広範囲にわたる汚染が懸念される標高が高い場所だけに、十分な調査で事実をきちんと知ること。政治的、感情的に対立することにならないよう、対話のチャンネルを広くとることです」。
 八丈島で建設される処分場の埋め立て容量は4万9500立方メートルだが、「容量が5万立方メートル未満の処分場は、都環境影響評価条例の対象外。500立方メートルを減らすやり方は不可解だ。いやしくも、都から職員が出向している公共団体のやることではない。むしろ義務づけはなくても、調査をしっかりやってアピールするべきでしょう」と述べた。