08/1/18





 昨年11月12日に町役場職員が八丈富士はちまき道路から撮影した「富士山」は、駿河の富士山をとらえた写真であることが証明された。「富士山展望百科」などの著者で、ライフワークとして富士山の見える限界の地を調査している筑波大附属高校の田代博教諭(57)が、写真をコンピュータソフトによるシミュレーション画像と詳細に照合し、完全に一致した。田代さんは「富士山の超遠望地点で唯一明瞭な写真がなかったのが八丈島なので、その意義は大きい。富士山展望史上、画期的な写真といえる」と話している。
 八丈富士からの富士山展望については、古くから「見える」という話はあったが、それを裏付ける証拠写真がなかった。
 96年8月4日付けの南海タイムスには、田代さんが、「理論的に八丈富士から富士山を見ることは可能。証拠写真を探している」と呼びかける記事を掲載した。そして99年2月7日には町職員が撮影に成功したとして写真を掲載したが、写真の倍率が低く、また、富士山と思われる白い三角部分の位置が微妙なことから、断定的な記事にはならなかった(後にこの写真の白い部分は新島の白ママ層断崖と判明)。
 そして1年あまり前の06年12月4日、千葉県習志野市の吉野宏さん(公務員、43)が八丈富士の遊ケ平看視舎から富士山の撮影に成功し、その写真が同年12月31日の読売新聞都民版に掲載された。3回目のチャレンジでの成功だったという。
 吉野さんは昨年12月9、10両日、八丈島を訪問し、宿泊先で11月23日発行の南海タイムスに掲載された「富士山撮影」の記事を知り、町から撮影データを借りて田代さんに鑑定を依頼した。また、この時の撮影でも、再度遊ケ平から富士山を確認している。
 「町職員が撮影した写真は1年前に自分が撮影したものよりはるかに鮮明で、手前の島や水平線すれすれにある伊豆半島の山並みも確認できます。よほど条件のよい日だったのでしょう」と吉野さんは驚いている。
 遠くから富士山を撮影するには、当然ながら気象や大気の条件に左右される。海を隔てる八丈島からは、島の北側を暖かい黒潮が流れている時は水蒸気が発生しやすく、撮影は困難だという。
 愛好者によると、こうした条件を分析して、可能性がある日に遠望の地へ赴くことは珍しくない。もちろんそこへ行っても見られないケースもあるが、簡単に見ることができないからこそ、「幻の富士」として価値があり、ロマンを感じるもののようだ。
 「八丈島は富士山が見える最南端の地」であることは、吉野さんが06年に撮影して証明され、昨年、町職員がより明瞭な写真の撮影に成功したことで、地元にも確固たる証明資料ができた。
 田代さんは「富士山が見える北限の福島県岩代町(現二本松市)などでも証拠写真の撮影に町をあげて取り組んできました。また南(西)限の那智勝浦町では日本最遠望の那智高原に展望台を設けています。八丈島も『南限の地』を胸を張って宣言し、観光資源として生かせると思います」と期待している。
 写真上部は、下部の町職員の撮影した写真(撮影地点・遊ヶ平の看視舎下のはちまき道路、標高約580メートル、富士山までの距離約263キロ)を元に田代さんが製作したシミュレーション画像。右に、今まで何回か富士山と誤認された新島の白ママ層断崖が見えている