07/10/12





 地球環境を考えた天然の色の研究・普及活動に取り組んでいる「天然染料顔料会議(NDPC)」が9月29日、『知りたい〜八丈島の天然の色〜黄八丈と植物』のトークライブを開催した。「第4回大会in東京」の一イベントで、会場の八高視聴覚ホールには、NDPCのメンバー19人を含む約50人が集まった。
 はじめに、鴨川会のメンバーなど13人が、着ている黄八丈を披露。その着物との関わりをそれぞれが語った。織った人は母、祖母、義母、友人の母親など身近な人が多い。養蚕農家で育ち、学校の制服は絹だったという産地ならではのエピソードも、参加者は興味深そうに聴き入っていた。
 つづいて黄八丈めゆ工房の山下誉さんが『天然染織の伝統』を報告。黄八丈の歴史(中国伝来説など)や染色の工程を、スライドを交えて解説した。「黄色の染料・コブナグサは、北海道から沖縄まで自生しているのに、染料として活用している地域は日本国内では八丈島だけ。古代中国ではコブナグサの黄は皇帝の色で染料に使われた」という。
 このあと黄八丈織物協同組合理事長の上ノ山博さんが、『天然染織産地のこれから』を報告した。組合は33年前に発足。多い時には100100人以上いた組合員が現在63人になり、実際に織っているのはその半分ぐらい。06年度の販売高は8557万円(着尺483反、帯443本他)だった。「繊維業界は全般に売れ行き不振だが、『黄八丈はいい』と言われている」との説明もあった。
 トークライブで司会をつとめたのは、NDPC会長の牛田智・武庫川女子大学生活環境学部教授と片岡淳・琉球大学教育学部教授。山下さん、上ノ山さんの報告を聞いたあと、参加者から質問や意見などが出された。
 「生まれた時から母が黄八丈を織っていたが、島にいる間は黄八丈の価値がわからなかった。ある日、東京のデパートの展示会で黄八丈の色がほかのどの着物より目を引き、その魅力に気づかされた」。黄八丈を織りたいと思うようになったきっかけを、こう語ったのは、2年前にUターンした女性の織り手。
 都の繊維試験場に勤務していたことがあるNDPCの佐々木和也・宇都宮大学教育学部准教授は「感性というものは教えられないが、育むことはできる」と述べ、「生まれた時からお母さんが織るのを見ていて、その匂いを嗅ぎ、音を聞いて育ったという島の女性の話を聞いたが、それは理想的な環境。天然の色、伝統的なものが日常にあって、そうした自然な体験が、やがてその価値に気づくベースになる」と、環境心理学で重要視されている原風景、原体験の大切さを指摘した。トークライブではほかに、染色業者の不足も関心を呼んだ。組合は現在4、5年前の注文に対応している状況という。島外から嫁に来た女性からは「織りをやりたくて資金をためていたが、組合の染色業者さんが亡くなられて1軒になり、気持ち的に足踏みしている」と、染色技術の指導体制を求める声があった。
 NDPCの参加者からは、「黄八丈は作れば売れて、工夫すれば市場拡大もできるという状況なのに、染色の後継者が不足しているのはもったいない。しかも黄八丈は、伝統という大きなものを背負っていて、八丈以外の産地では作ることができないもの。島の大きな財産だ」「都の地方独立行政法人が繊維産地の指導などを行っている。こうした危機的な状況に何か施策があるのでは」との質問があがった。
 これに対しては「八王子支所から指導に来ていただいているが、『問題点がある』と指摘を受けている」との回答だった。
 翌日から2日間は、樫立・西條染物店、中之郷・黄八丈めゆ工房、三根・山下織物工場などを視察し、染色の現場で技法の説明を受けた。
 写真は地機(じばた)織の実演(黄八丈めゆ工房にて)