| 「ナダメ考」
投稿・浅沼 進
漁師をやっていた頃、ナダメ(ウツボ)に興味を持ち、捕り方から道具、さばき方や保存法、そして食べ方にいたるまで30年あまり、多くの時間を割いてきました。
過日亡くなられた魚屋のカネ兄ちゃん(故奥山兼康さん)に何年か前呼び止められ、「お前のナダメのくんせいは、島中で一番うんまいと皆がよが、ナダメは島で捕れる同じナダメ、味に変わりはなっけはず。どこかにうんまくしょ、こつがあるはずだ。なぶさず(隠さず)に皆におせぇておけ」と言われました。
「おい、そのうちに文に書こじゃ」と、返事はよかったのですが、今日になってしまいカネ兄ちゃんに申し訳けなく、気が引ける日々です。
ナダメにはたくさんの種類がありますが、島でカゴで捕れる代表はホンナダ(ウツボ)、赤ナダ(トラウツボ)です。ナダメ捕りの道具は、市販されているようですが、呼び名は地方でそれぞれなので単にカゴと呼んでおきます。一時、伊豆あたりから竹製のカゴが相当入ったようですが、私はこれまで市販品は一回も使ったことはなく、すべて手作りです。
現在のカゴ仕掛けを考案した時、当時の水試分場長から「特許を取りなさい。手続きはやってあげるから」と言っていただきましたが、皆で使って貰えればいいと思ってそのままにしました。
ナダメは大きいほうが断然美味しく、できるだけ大きなナダメを捕りたくて手作りにこだわりました。市販品でどれだけの大物が捕れるか知りませんが、私のカゴで獲った最大のナダメは3・5キロありました。
ナダメは全国どこでも食べるわけではありませんが、食習慣のある地域にはさまざまな調理法があり、湯引き、たたき、くんせい、干物、天ぷら、蒲焼き、佃煮などで味わいます。和歌山では結婚の祝いの席や、新婚さんに食べさせると言います。ウナギではありませんが、精力がつき、薬にもなるということでしょう。
伊豆諸島でも大島や神津島と八丈島とでは全く違うようですが、八丈ではアマゴ(クンセイ用の道具)であぶって、煮付けて食べるのが普通です。旬は寒の内。できるだけ大型のナダメを背開きで3枚におろし、背ビレを切り取り、身は肛門より5センチほどからシッポの方は取り除きます。煮付けで食べるには片身を5センチぐらいに切ってアマゴであぶります。
あぶり具合は火力やあぶる道具、ナダメの大きさにもよります。昔はカマドの残り火でいろいろな魚をあぶり、島では「魚のアマゴ」と総称していました。
ここで注意が必要なのは、中骨から身をはがすときに骨まで削って身の方に残さないこと。せっかく旨いものを食べるのに、口の中で削られた中骨がジャリジャリしたのでは台無しです。美味しくいただくには手数を惜しんではいけません。
岸からカゴを投げ込んで獲れる小型のものでも旨いのもありますが、骨で骨で大変なのもあります。その代表が誰でも知っている赤ナダ。血合いの小骨が細く長く、数もホンナダの倍あります。
これら小型のナダメは、先ほど切り落とした背ビレやシッポの方と共に塩をして白干しにします。島の冬は曇りが多く、天日干しは大変です。2日過ぎると臭いが付くので、頃合いを見て室内に取り込み扇風機の風で乾燥させます。
乾いたら花切りばさみで7、8センチ幅に切って、ビニール袋に入れ凍結します。これを油でゆっくり揚げてビールのつまみにしますが、特に背ビレは絶品です。
土佐に「ウツボのタタキ」という名物料理があります。できるだけ大きなナダメを3枚におろし、背ビレや血合いの小骨もとってあぶって刺身に切り、二杯酢で味付けするのですが、大きなナダメでこれを作ると大変な量になりモッチャクします(手に余ります)。
そこで私なりに工夫しました。土佐風では血合いの小骨を取りますが、これを取らずにおろしたまま片身ずつ3、4本の串を刺して身が巻かないようにして、生あぶりしたところで水で冷やし、これをラップで包んで凍結保存します。
半年ほどなら味も変わりません。幅6センチ位に切ると、あのいやな血合いの小骨も細切れになり気になりません。食べるときに必要量を取り出して、半凍結状態で良く切れる包丁で切ります。二杯酢でも良し、味噌味で煮れば、お年寄りでも愛し子(可愛い子供)にも心配なく食べさせることができます。
皆さんも手間を惜しまずぜひ、ナダメを試してみて下さい。
(三根在住)
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