07/5/25




 2000羽近くまで増えた鳥島のアホウドリの小笠原諸島聟島移住計画が来年度から本格的に実施されることになった。31年間にわたって保護活動を続けてきた東邦大学理学部の長谷川博教授は「鳥島は噴火の危険性があり、尖閣諸島は領土問題など政治的に不安。かつてアホウドリが繁殖していた小笠原諸島に、第3の繁殖地が確立できれば、復活は確かなものになる」と、新たな取り組みに期待を寄せている。
 現在、地球上に生息するアホウドリの約8割が鳥島を繁殖地としている。同島は火山活動が活発で、1902年の大噴火で島民1255人が全滅。その後も39(昭和14)年に噴火があり、溶岩流が流出した。02年8月には63年ぶりの噴火を観測。幸いアホウドリのいない時期で繁殖に影響はなかったが、今後も親鳥が鳥島にいる時期に突発的な大噴火が起きれば、繁殖集団に大打撃を与えるおそれもあり、移住計画は緊急の課題として再認識された。
 その移住計画を後押ししたのが、00年にアホウドリが米国の絶滅危惧種に指定され、再生基本計画の作成が法律で義務づけられたことだ。02年には長谷川氏ら専門家による国際会議で、非火山島の小笠原諸島への移住・繁殖など、国際協力による「アホウドリ再生計画」の草案がまとめられ、その後、より具体的な対策が検討されてきた。
 長谷川氏は「アラスカ海域での底はえ縄漁でアホウドリの混獲が大きな問題となり、漁を続けるためにはアホウドリの個体数を増やして、絶滅危惧種の指定を解除することが条件になった」と、漁業的な事情からアホウドリ保護事業が動き出した経過を説明する。今回の移住計画の費用約3億円も米国の負担によるものだという。
 移住の具体的なプランは、鳥島から南南東に約360キロ離れた聟島に50〜60体のデコイ(模型)を設置し、録音したアホウドリの音声を流す。その疑似コロニーに5年間で100羽ほどのひなを運び、人工飼育して巣立たせ、それらが数年後に聟島に成長して帰ってきて繁殖を開始すれば、移住計画は成就となる。
 移住させるタイミングはふ化から1カ月程度経ち、手が掛からなくなった時期。人間を親鳥と間違わないように、給餌にはハンド・パペット(指人形のようにくちばしが動く模型)を用いる。「現在、山階鳥類研究所のスタッフがクロアシアホウドリのひなで予行練習を行っており、来年2月にはアホウドリの移住を実施する予定。繁殖するまでには最低でも7年ほどかかるので、実際にコロニーが形成されるのはまだ先になる」という。
 長谷川氏が初めて鳥島を訪れた76〜77年のシーズンに15羽のひなを含めた71羽を観察できた。それから30年経ったこの春の調査(4月7〜30日)では、アホウドリは推定1945羽に増えた。従来コロニーの燕崎では215羽、気象観測所跡近くの新コロニーでは16羽のひなを確認した。「本当に安心できるのは5000羽になってから」。長谷川氏の保護活動は今後も続く。(写真提供=長谷川博氏)